高8 塩澤千秋 (カナダ カルガリーから)      [塩澤さんへの質問や感想はこちらへ] cshio@shaw.ca

 カルガリー、一時随分下がった気温も最近は少し上がって日中氷点下2度位、夜間氷点下10度近く、少し暖かくなりました。今はクリスマスのシーズン、皆ショッピングに忙しいそうです。でも日本のような街中に響き渡るジングルベルは聞かれません。ショッピングセンターではバックミュージックにクリスマスキャロルが流れています。日本のあの勢いのよい拡声器から大きく流れる年末の活気が懐かしいです。
 クリスマスのイルミネーションは至る所に見られます。市内のゴルフ場に大規模なものがあったり、体外の広場や建物には飾りがつけられています。各家庭では室内にクリスマスツリーを飾りますが、家の外にもちょっとした飾りをします。中には家全体を派手やかにイルミネーションしているところもあります。夜市内や住宅街をドライブしてみて楽しみます。今が一年中で一番楽しい時、パーティーがあちこちにあります。しかしこれも25日までで最後は家族皆が親の家に集まって和やかに食事をしておしまいです。新年には何もしません。人々は一月二日から勤めに出ます。  (December 21, 2001)


市内のゴルフ場に飾られた巨大な
クリスマスツリー
 

カナダのクリスマスは雪の中。多くの家でツリーを飾り賑やかに過ごします。また写真の様に家全体を飾り付けてしまう所もあります。
(2001年1月1日撮影)

 氷河をわたる風(8) Autumn leaves

Stony Indianの居留区内。カルガリーとバンフを結ぶ
古い道が通っています。(2000年10月1日撮影) 

 カナダ西部の秋は殆ど黄色一色です。砂糖カエデなど一杯あるカナダ東部と違って、この辺りの樹木はポプラ、白樺、楡、落葉松など、殆どが、秋、黄色になる木ばかりです。紅葉する木が少ないので紅葉ではなく黄葉と言いたいような景色です。しかし、ある秋の事でした、Stony Indianの居留区に入り込んだ時、この辺りには珍しい紅葉を見つけました。柳の木の一種らしいです。鋸の歯のようなYamuska山の裾野を赤く彩っていました。思わずシャッターを押してしまいました。

カナダに来たばかり、秋山が見たくてロッキーに出かけました。
ジャスパーの近くで秋と冬の境を見た思いでした。(1973年10月撮影)

 

普通ロッキーの秋は二番目の写真のようにアスペンポプラが主で黄色になります。後ろの山には既に雪が来ています。秋と冬の境目でしょうか、ロッキーの短い秋のほんの一瞬です。カナダに移住、憬れのロッキー山に初めて行った時こんな景色に出っくわしました。
 こんな景色がロッキーで見られるのは実は9月から10月、今はもう12月、山は全て真っ白です。そして町はクリスマスの飾で一杯です。特に子供の居る家は大きな飾りを致します。家全部をイルミネーションしてしまう家もあります。そんな家をカルガリーの下町を見下ろすボー川の傍の丘で見つけました。またカナナスキスの熊の話しをして今年を締めくくりましょうか。

 あわや圧死
 カナダでは冬の初め一ヶ月くらい野生動物のハンティングが許されます。しかし、規則を守ることを非常に厳しく要求され、破ると厳しい罰が科せられます。魚釣りなどでも大きさと数は常にチェックされます。ボー川では鱒など一人一日三匹までです。大きさは20センチ以上、40センチ以下等と川や湖によっていろいろ違います。釣り人は物差し持参で釣っています。ある人が余りに釣れ過ぎてつい夢中になり100匹釣ってしまったそうです。そこに監視員が回って来て、直ちに罰金のかたに、乗って来た小型トラックを抑えられたそうです。日本から来た若い人がその年禁猟区となっている事を知らずに釣り糸を垂れていました。そこへ監視員が来て後ろ手に手錠をはめられて連行さえたそうです。その時の情けなさは大変身に沁みたと言います。それは“犯人”の安全のためでもあるそうです。もし逃げた場合罪が重くなる上、時によっては発砲しなければならなくなるからだそうです。
 野生動物のハンティングも厳しい制限が課せられます。動物によって狩猟期間が違うようです。また州によって撃ってよい数が違います。例えばムースなどアルバーター州では州全体で一年に一頭だそうです。ハンターがその権利をくじ引きで決めるそうです。オンタリオ州のように湖が多くムースかたくさん棲む所では一年に一人一頭撃ってよいそうです。
 ある冬、世界的に有名な昆虫研究所がある、オンタリオ州、スーシーマリーと言う小さな町に、日本人研究者T先生を訪ねたことがあります。先生は楡博士と言われ楡の木の病気と昆虫との関係をひたすら研究している人です。その夜先生が自宅で大歓迎をしてくれました。自家製のぶどう酒を幾種類も出して下さり二人とも陶然となりました。そしてそこに出されたのが厚さ1インチもあろうか、そして大きなお皿からはみ出しそうなステーキだったのです。脂身がなく柔らかで実に美味しいのです。牛肉とは少し違います。それがムースの肉だったのです。私が行くことを知って先生の研究助手のパトリックがこれを食べさせろとくれたものだそうです。あまりの美味しさに二枚も平らげてしまいました。
 パトリックも秋にはハンターになってムースを追いかけます。ある日狩に出たのですがムースの足跡しか見つからず、むなしく引き上げて来る途中、一人のハンターが、撃ったばかりのムースの傍で頭を抱えているのに出会いました。実はこのハンター既に一頭撃っていたのに、このムースを見たとき反射的に引き金を引いてしまったそうです。一人で二頭撃つ事は大変な違反で重い罰則が課せられます。そして彼はパトリックにこのムースを貰ってくれないかと提案した次第です。
 アルバーター州ではムースは制限があって中々撃てませんが鹿は一人一頭許されるようです。ジョージは、自動車修理経営者のOさんのお得意さんです。肥った赤ら顔の人の良い典型的なアメリカ人タイプ。そのジョージがある秋の終わり頃、左手を包帯でぐるぐる巻にし、肩から釣って固定し、おまけにびっこをひいて現れました。鹿の猟に行ったそうです。山に入って鹿を待つことしばし、緊張がゆるんでふっと眠気を誘われた時、突然、音もなく目の前にグリズリー熊が立ち上がりました。無我夢中でライフルをぶっぱなしました。狙いも何もあったものではありません。そして、気がついた時には、熊の下敷きになっていました。その時に、腕が折れ、足をくじいたのです。幸い、弾丸が当たってくれたから手足だけで済みましたが、そうでなければ人生一巻の終わりだったのです。気を失ったジョージの意識を戻してくれたのは冷たい氷河の風の一叩きだったようです。たまたま、店に来ていた男がこれを聞いていて、この時期に熊を撃つのは違法行為であるとほざきおったそうです。