高8 塩澤千秋 (カナダ カルガリーから)
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日本はもう桜が満開になっているとのこと、NHK 国際テレビで見ました。東京の代々木公園、京都のあちこちの寺の見事な桜など紹介しています。飯田の桜ももう満開でしょうね。花見の時期ですか。天竜峡の桜、今宮の桜、みな咲き揃って、むしろを敷いてご馳走を広げて。帰りたいです。こちらにはこんな花見の出来るチャンスはありません。まだ、雪の中です。
今年の冬は遅く始まったためか、何時までも続きます。三週間ばかり前気温が上がり始め日中10度、夜間マイナス5度くらいになりました。しばらく続いたので、ボー川の土手のプレーリークロッカスの開花が気になって見に行ってきました。最初の日は芽も出ていなかったのですがその一週間後三輪咲いているのを見つけました。広い野原を一時間自転車を使って探した結果です。蕾はかなりありました。気温が上がったため、突然出てきたようです。来週はもっとたくさんの花が咲いて良い写真が撮れるかなと思って帰ってきたのですが、その晩から気温が下がり雪が降り始め、四日間降り続きました。ようやく晴れましたが、カルガリーの町は再び雪の中です。でもやはり春の雪ですね、解けるのは早そうです。クロッカスが心配ですが、北国の花は寒さに結構強いですから雪を持ち上げて咲いているかもしれません。雪が解けたら早速写真を撮りに行こうと思います。
ボー川には水鳥が来ています。近年は餌をやる人が居るので渡りをサボって越冬するのも居ますからその連中かもしれません。カナダグースがペアーを組んでいます。冬は彼らの恋の季節、そして子育ての準備の時期です。恋は静かに語るものではないかと思うのですが、恋の鞘当、子育ての縄張り争いとボー川は大変賑やかです。氷の上で恋をささやくカナダグースの写真を添付しておきます。
(April 10, 2003)

  氷河をわたる風(22) Butterwort

スミレに似たこの優しそうな花は実は食虫植物、昆虫にとっては誠に怖いムシトリスミレです。
スミレ科には属さずタムキモ科の一種です。花は全くスミレそっくりですが、葉っぱが黄色くて地面にへばりつくように広がっています。粘り気のある葉の上に昆虫が止まると葉が丸まって中に抱きこみ、消化液を出して溶かし自分の栄養にしてしまいます。食べ終わると又開いて次のご馳走を待つのです。氷河の風の中にそよそよと揺れる姿からはそんな怖さは想像も出来ません。
ロッキー山ばかりではなくその裾野や、アメリカ大陸の北方アラスカまで分布しています。ロッキーでは疎らながら、所々にまとまって咲いているのを見ます。グラシーレイクでは明るい場所の清水のちょろちょろと流れる岩の上に、写真の花を撮影したTangle Fallsでは明るい森の中、滝の傍で見付けました。

 

 

 

写真左上.
花だけ見ると優しいスミレと全く変わりません。

写真左下.
横顔を見てもスミレです。ところが下のほうに見える黄色い葉が曲者です。ここに止まった昆虫は花の栄養にされてしまいます。

写真右上.
この花は写真で見るような美しいTangle Fallsの岸辺に咲いていました。この滝は、観光地として有名なコロンビアアイスフィールドのパーキング場からジャスパー方向に5キロほどの所、坂の途中にあります。この辺りにはアメリカン
ビックホーン シープが群れているのを良く見かけます。

(3枚とも1999年6月29日撮影)

 エイズが福音となる皮肉

 人間が子孫繁栄の目的以外に性行為を楽しむ以上、その行為を仲介として広がる病気が出てくるのは自然な事でしょう。現在その最先端を行くのがエイズです。
正体をあらわしてから三十年近くになりますが、近代医学の知識を総合しても未だ治療法の確立が出来ない病気です。一旦感染すると治療法がないため直る望みがなく、体はあらゆる雑菌のいいようにされ、対象療法で少し命を長らえますが、今の所徐々に死んで行くのを待つしかありません。おまけに、この病気が最初発見されたのがホモの世界であったため、病気そのものが特殊な状態に置かれてしまい、他のルートで感染した患者も含めて非常な誤解を受け社会的に冷たく扱われています。最近、状況は幾分改善されて来ましたがそれでも患者は大変惨めな人生を強いられる病気です。
感染経路は欧米では男性の同性愛、麻薬使用者の注射針の共有などが主ですが、輸血、血液製剤による感染もありました。最近はこれら輸血用血液や血液製剤の検査が徹底して行われ、これらからの感染の可能性はぐんと下がりました。特に血友病患者への血液製剤には最大限の注意が払われていて、感染予防効果はかなり上がっています。
こうして医療事業の管轄下にある作業での事故的感染は顕著に減少しました。しかし、個人的な性行為、麻薬使用による感染は少しも変わっていないようです。性行為による感染も同性愛ばかりでなく異性間での性行為による感染が増加しているのが現状です。特に東南アジア、インドでは感染したことも知らずにいる人が多く、そうした人からの感染は増加する一方、国を滅ぼす病気となるのではないかと恐れられています。日本では最近若い人達の間で感染が増加していると聞きます。こうした種類の感染から逃れる唯一の方法は、危ない冒険をしないこと、お行儀を良くする事のみです。
日本男児の性的行儀の悪さは世界的定評を得ています。これについてはもっと悪いのがいると反論する人もいます。例えばスイス人です。スイスと言う国は性的行儀の悪さに対して非常に厳しい国であるそうです。従ってスイスの男性が世界で尤も行儀が良い紳士であると言われていました。ところがどっこい、日本に来てこの種の事で尤も破廉恥に羽目を外すのがスイスの男性だそうです。男と言うものはいずれの国の出身であれどうしようもない代物であるらしいですね。自分の国の男性が世界で最も行儀が良いと信じ込んでいたスイス出身の教授に、何かの折この話をしたら目を剥いていました。男のさがと言うものは何処の国の男も同質である事をやっと理解したようでした。自国内で余りに厳しいため、外国、特に質の違うアジア社会に出た時はたがが外れ、かえって反動が激しいものとなって現れるのかも知れないと悲しげに感想を漏らしていました。この様に男と言うものはいずれの国の男もしょうもない者で、従って日本男児のみが行儀が悪い訳ではないと言いたいのですが、しかし、日本男児の場合は内に於いても外においても大いに羽目を外してしまうのです。
日本では誰かが海外旅行をしてくれば、この種の話題がおもしろ可笑しく、時には自慢気に語られます。妻帯者であってでもです。
カナダではこうした事は決して一般的な話題にはなりえません。特に妻帯者の場合には、このような行為をおおっぴらに話す人は先ずいません。例えそうした経験を何処かでして来ていても、とても大っぴらには語れないのです。これだけ離婚の多い国ではこんな行為が発覚した場合、非常に不利な条件で離婚を無条件で飲まねばならぬ羽目に追い込まれます。この様な状況が或いはこのような行為をする事、またそれを語る事へのブレーキとなっているのかも知れません。兎に角そうしたところへ出かけてゆくのは大部分、特殊な独身男性であると言うことになっています。
カルガリーの町にも勿論男性の相手をすることを商売とする女性はいます。商売する場所も決まっているようです。勿論違法です。この町に住み始めた頃、こうした商売が街頭でこんなにも大っぴらに行われている事を知らずにいました。清潔な町と思っていたのです。冬の物凄い寒さの中、肌が見えるほどの大変な薄着でセクシーに街角に立つ女性を見て、女性と言うものはおしゃれのためには命に関わるほどの寒さをものともしないのかと、その健気さに感心したものでした。しかし、段々と事情がわかってきてその服装の意味する所を理解するに至ったのです。
最もこうした商売は服装だけでは判断し難い事もあるようです。派手な服装をするので有名な女性学者が私達の専門、免疫学会にいました。アメリカのある空港で学会帰り、実に「軽快な」服装で歩いていて、一人の男性から声を掛けられたそうです。その種の女性と間違えられたのです。意味が解るやいなや持っていたハンドバックでその男性の横面を思いっきりひっぱたいたそうです。たまたま同じ学会に出ていた研究者達に目撃されて、以後、彼女はこの学会で勇名をはせる事となりました。
カルガリーでは冬季オリンピックの前からこれらの商売は市から目の敵にされ徹底的な取り締まりにあいました。しかし、何時の間にか、また街頭で見かけるようになりました。今度は溜まり場が少し変わったようです。これに対抗して取り締まる方法も少し変わって、商売をさせた男性もつかまるという事です。婦人警官のおとりに捕まって酷い目にあった男性のいる事を新聞が報じています。ヨーロッパの古い町にもこうした商売ははやっているようですが、注意して良く見ないと解らない場所に立っています。しかし、カルガリーは夏の陽の長い事もあるのでしょうか、彼女たちは街頭にたむろし、スポーツにでも誘うが如くに客を捕まえて連れて行くのです。
こうした商売は日本からの男性旅行者には大変気になるものらしい。ロッキー山脈の風景も中々のものですが、また町の中の風景もまんざら捨てたものでは無いと思うのでしょう。ところが、商売が人間相手であるので言葉の関係で一人で行動できません。従って、ツアーガイドにその交渉をさせる事になります。これはガイド達が最も嫌う「仕事」です。日本旅行者のこのようななりふりかまわぬ図々しさに多くのガイド達が泣かされてきました。日本人の特性なのでしょうか、会社が社員を「自社の所有物」と考えると同じような論法で、ガイドを二十四時間自分の自由にどんな事にでも使えると思い込んでいるようです。
ところが最近このようなガイド泣かせの無理な要求をするお客さんが激減していると彼らは喜んでいます。エイズのためです。中には、女との交渉をしてくれと強引に押し付けてくるお客もありますが、「エイズが怖くありませんか」の一言で、大概はクシャっとなります。ガイドたちにとってエイズはまさに救いの神となったのです。。日本男児が海外に出て派手に浮名を流さないために、いや浮き名を流しても良いが、そのために嫌がるガイドを泣かせないために、エイズは治療法が見つからない方が良いのです。こんな反社会的意見がガイド達に密かに歓迎されています。彼らは今まで散々悩まされ、とてつもなく嫌な「仕事」から、エイズのおかげで解放されたと言う訳です。エイズが彼らに福音をもたらせたのです。この様なガイドたちのささやかな平安を壊さない為に、目的のためにはエイズなど怖がってなぞいられるか、などという“英雄”が現れない事を祈るばかりです。

写真1.観光客で賑わうBanffの町。十二月ですが、多くのスキー客が来るようになって冬でも賑やかになりました。ただし、ニューヨークの 9月11日のテロ以来客足が急激に減りました。その上今度はSARS で多くの人が旅行を控えているので、現在、観光事業は踏んだりけったりです。(2000年12月2日に撮影)
写真2.Johnson Lakeから見たCascade Mountain。Banffの象徴のような山ですが、観光客がこの角度から見るのはめったにないでしょう。この辺りの松林には五月になると野性の欄Fairly Slipperの可憐な花が一斉に咲きます。(2001年5月25日撮影)
写真3.Jasperの駅前の観光情報センターです。ちょっとしゃれた丸木小屋の建物です。ここも観光客が多いですが、Banff に比べるとあまり熱心ではないようです。そのためか自然により近い感じです。(2000年9月11日撮影)
写真4.Jasper からMedicine Lakeへと山の中を早朝ドライブしていたらMooseがひょっこり現れました。 若い雄です。野生動物がいっぱい居て轢き殺さないように注意してドライブします。(2000年9月12日撮影)