今年の暑さはちょっと異常じゃないのかな。暑い時には涼しくなる本を^^涼しくなる本と言えば、怖い話だよね。

という事で、先ずはこの本、『信州怪談』。著者の丸山政也氏は松本出身の怪談作家。
県内各地に伝わる怪談話を集めた本。当然ですが、飯田下伊那の話も収録されています。

例えば「赤子ヶ淵」は、清内路に伝わる話。信長が伊那谷に攻め込んだ天正10年、飯田城の城将 坂西織部(武田の配下)は、木曾へ逃げようと城を脱出。途中で敵軍に遭遇し、赤子の信千代を部下に託して打死。二人の部下が背負って逃げるも、若君は空腹と疲労で亡くなってしまう。川淵の岩陰に若君を葬り、二人も自害した。以後この辺りでは赤子の鳴き声が!いつしか此処は「赤子ヶ淵」と言われる様になった。・・・それにしても、信長から逃げるのに、なぜ木曽へ向かったのか?方向が違うだろうが^^;

「南原橋」天竜舟下りを楽しんで舟が鵞流峡に差し掛かると、頭上に大きな南原橋が見えて来る。乗客の一人が何気に橋を見ていると、身を乗りだしている人の姿が!アッと思う間もなく、落下していく人影。でも水面に届く前にふっと消えてしまった。ビックリして同乗者に話してみたが、他の人は誰も見ていなかった。・・・今は立派な橋だけれど、昔はつり橋でした。私も、子供の頃自殺の名所と聞いています。「言う事を聞かんと、南原の橋から天竜川に放り込むぞ」。何度親父に脅された事か^^;

この他にも、南信濃にある龍渕寺では・・・とか、
大鹿村に流れる鹿塩川の上流に・・・なんて話が載っていますよ!>信州怪談(Amazon)

お次は「天竜川殺人事件」。著者の梓 林太郎(本名 林 隆司)は、1933年(昭和8年)生まれで飯田市上郷出身。進学のため18歳で上郷を離れた、とあるので同窓生かと思ったが名簿にその名は見つからず^^;

旅行作家 茶屋次郎シリーズと言えば、ご存じの方も多いかな?ストーリーは、ネタバレしない様に気を付けないと^^;

話の中に「市田の一家七人殺し」という事件が出てきます。実はこれ、実際にあった事件なのです。私はたまたま子供の頃、家族が話題にしていて聞いていました。なんとも恐ろしい話で、覚えていました。犯人は捕まっておらず、事件は解決していません。迷宮入りとなった事件なのです。話を聞いた時七人家族とは、爺さん婆さん、若夫婦、子供が三人と思っていたのですが、調べてみると実際は違っていました。どうやって調べたんだって?そこはまぁ私の事ですから・・・なんてね^^;

実は「長野県犯罪実話集」なる本がありまして、その第6集に載っていました。それを入手する事が出来たのです。小説の方は、ちょっと置いておいて・・・実際の事件はどうだったのかを書いてみます。
ちなみに、この本は非売品です。発行は長野県警防犯課内防犯信州社。昭和42年の本です。図書館などで探せば見付かるかもしれません。

事件が起こったのは、戦後間もない昭和21年の5月。市田村(現 高森町)大島山。集落から少々離れた一軒家。夕方、隣組の用事でその家を訪ねたおばちゃん。表から声を掛けたが返事がない。障子の破れ目から覗いてみると、布団の上に皆寝ている様子。こんな時間まで寝ているなんて・・・嫌な予感がして、人を呼びに一旦戻った。様子がおかしいという話しは直ぐに広まって、この家の前には大勢の人が集まった。まだ誰も中に入っていない。夕闇はその色を濃くし始めていた。「先ずは本家ずら」そう言われて、本家のおい様を先頭に皆がぞろぞろと家の中に。部屋の明かりを点けると・・・そこはもう血の海で地獄絵のような有様。悲鳴を上げて外へ飛び出す者、腰を抜かしてしゃがみ込む者、呆然と立ち尽くす者。七人は布団の中に寝たまま、頭や顔をザクロの様に割られ、無残な姿で亡くなっていたのです。

市田の巡査から急報を受けた飯田署は、食糧難から一家七人を皆殺しにして米を奪った強盗殺人事件と推定。直ちに全署員を招集し、現場保存と聞き込みを開始。翌日には県警からそうそうたる顔ぶれのベテラン捜査員等が到着。瑠璃寺に捜査本部を置き、本格的な捜査が始まった。しかし犯行現場は、心なくも発見時の村人らに荒らされてしまっていた。

被害者宅のご主人は、事件の8か月前に病死。殺されたのは未亡人(38)長男(12)二男(9)長女(6)三男(3)の5人と、シングルマザーとなって身を寄せていた妹(25)、その長女(3)の計7人。成人男性がおらず、集落から離れた一軒家の農家。その点から狙われたと思われる。

女性二人が殺された事から、怨恨、痴情の線も捜査されたが、被害者の着衣に乱れはなく浮いた噂もなし。目的はやはり米と推測された。凶器は現場に残された薪割用の斧とされたが、指紋は採れなかった。また柄に付いていた血痕の状態から、犯人は左利きと思われた。更に、一撃か二撃で即死させている事、盗んだ米の量、足跡などから、力の強い大柄な男。幼い子供まで情け容赦なく殺害している事から、精神又は性格に異常がある者。そんな犯人像が考えられたが、容疑者を特定するまでには至らなかった。捜査が入る前に現場が荒らされてしまった事も、事件を難しいものにしていた。時はむなしく流れ、昭和36年5月、時効が成立してしまった。

小説の方は、この事件からイメージを広げ書かれた物と思われます。事件の頃作者は中学生くらいかな。強いイメージが残ったと思われますね。>天竜川殺人事件(Amazon)

おどろおどろしい話の後は、口直しが必要ですね。
清涼剤の様な爽やかな本「アートに恋して」。この本の著者も飯田出身ですが、同窓生ではありません^^;広瀬その 、本名 広瀬(川手)秀子さん、飯田生まれ。丸山小~西中~風越~米国留学~CA ~英語教室・・・ご存じの方も多いのでは。

地元の南信州新聞に「この時季聴きたいあのヒット曲」というタイトルで、月2回程掲載されているエッセイ。

こういうと「あ~、あれか」と気付く人も居るのでは。
それをまとめて本にした物です。
タイトルも変えてとてもおしゃれ。

新聞には無い目次があります。季節ごとに花と曲が並ぶ。

今は夏。夏の目次を見てみましょう。
その取り合わせは作者の感性で、ユニーク。

アジサイは「イノセントワールド」
クチナシは「愛をこめて花束を」
スイレンは「雨音はショパンの調べ」

この花は何故この曲?読めば納得^^

 

 

アジサイ・・・「イノセントワールド」。スイレン・・・「雨音はショパンの調べ」。

タチアオイは「白日」。バックの川は、松川です。(花の写真は本にはありません)

タチアオイで思い出した。善光寺の寺紋はタチアオイです。はて、どういうタチアオイ?

調べてみました。こちらはウマノスズクサ科の”双葉葵”を図案化したもので、立葵。花のタチアオイとは無関係との事でした。話が横道にそれた様な^^;

新聞の連載はまだ続いています。次も又出るのかな?>アートに恋して(Amazon)

(高18回 高田)