ジブリ映画「風立ちぬ」が上映されていた頃、こんな話を聞きました。
>春草の兄 為吉は、東大工学部の前身校を出ていてそこの教授となった凄い人。東大で堀越二郎の先生だったかも。大正天皇の教育係もしていた。

この話を此処で詳しく書こうと思ったのですが、調べてみたら違っていました^^;出身校は東京物理学校、後の東京理科大でした。話してくれた人は、東京物理学校を東大工学部の前身と勘違いしたのかな?しかししかし、やはり凄い人と分かりました。卒業証書が見付かったのです。ご覧ください。
第一号卒業証書 菱田為吉

菱田為吉は飯田藩士菱田家の次男として、明治元年に生まれました。長男の瀬平が早くに亡くなったので、事実上為吉が菱田家の惣領でした。下伊那中学校最初の卒業生であり、東京物理学校でも最初の卒業生になっていました。卒業後はそこの教員となっていて、授業に役立てるため手彫りで正多面体模型を製作した・・・とあります。現品は神楽坂にある理科大の近代科学資料館に展示されています。(写真はGoogle Map より)


資料館2階に展示されているとの事なので、東京にお住まいの方は是非行ってみてください。入場無料だし^^
⇒菱田為吉の木彫多面体模型

想像してみてください。当時は電動工具なんてありませんから、全て手彫りです。どれ程の時間をかけたのでしょうか?それも一個や二個でなく、47個が常時展示されているとの事ですから驚きです。これはもう神業とも言える芸術作品ですね。

手元に「ものがたり 菱田春草」と言う本があります。これは下伊那教育会が小中学生向けに出版し、学校を通して私の子供が購入した(買わされた?)物です^^;皆さんの家にもありませんか?

これには兄為吉もしばしば登場しています。何と言っても春草一番の支援者ですから。
>為吉はもともと絵がすきでしたので、絵描きになろうと思いましたが、自分は家をつがねばならないので、学校の先生になりました。しかし、どうしても絵かきになりたい気持ちをすてることができません。そこで、自分の夢を弟にかなえてもらおうと考えました。(原文のまま)

春草が絵かきになろうと決心したのは、兄為吉の影響と言えます。東京の住まいも為吉の下宿でした。

春草が東京美術学校(現東京芸術大学)を卒業する頃、為吉は九州で先生をしていた様です。明治27年、九州の兄に卒業制作のための旅行費用を送ってくださいとお願いしていました。
更に本書では、春草が帰省した際兄為吉が務めている長姫城跡にある飯田中学を訪ね、実験中の試験管に藍色を見付け分けて貰うシーンが描かれていました。
飯田中学では科学(化学?)の先生をしていた様ですね。手持ちの名簿で探してみると・・・743ページ 旧職員の欄に出ていました^^ 明治35年12月から大正7年4月まで居た事が分かります。担当科目までは記されていません。

 

では、他の期間は? 物理学校の教壇に立ったのは、卒業の翌年 明治22年から。明治27年には春草が九州の兄に仕送りを依頼しているので、その前後は九州に居たと思われます。春草が為吉宛てに送った最後の手紙の記録がありました。 宛名と差出人は

明治44年8月29日 長野県下伊那郡飯田長久寺前   菱田為吉様親展
                                            東京府下代々木143      菱田春草

実家は仲之町ですから、為吉は親とは別の住まいを構えていたんですね。春草はその翌月9月16日に亡くなっています。その頃はまだ飯田中学に居ました。飯田中学退職後はどうされたのか?ネットで検索してみたのですが、良く分かりません。亡くなったのは昭和18年、兄弟で一番の長寿です!

検索で、為吉のお孫さんが書いているブログが見付かりました。
⇒MAKOTO’S HOMEPAGE
春草に付いては書いてありますが、残念ながら祖父為吉に付いての情報は有りません。ご自宅は練馬区でした。

先輩の斎藤純さん(高16回)も此処ふるさと情報便に書いていました^^;
⇒斎藤さんのふるさと情報便 春草Ⅱ
為吉の写真はこちらから拝借する事にしました^^大正天皇の教育係と言うのは皇太子時代ですから、物理学校卒業直後と思われます。

弟唯蔵に付いても書いてあります。東京帝国大を卒業後に教授となり、明治、大正の航空工学者として知られている・・・なんと堀越二郎の先生だった可能性があるのは、弟の方でした。(後で調べてみます)

同窓会名簿を見ると菱田姓は3名載っていました。菱田氏孝(中09)故人、菱田武夫(中19)故人・町田市・画家。

菱田宗志・在校時は天文班班長!阿智村出身。今は???春草と関係あるのかな???

菱田家の人々に付いては、もう少し調べてみたくなりました。次回は・・・④菱田家の人々 と言う事にしておきましょう。
日夏耿之介に付いても、いずれ書かなければ^^;

(高18回 高田)