書店でこんな本を見つけたら、ついつい買ってみようと思ってしまいませんか?でもこの本、読んでいる内に腹立たしくなる程の駄作です。西村京太郎ってこんな作家なの?詳細は後程書くとして、その前に飯田線の秘境駅を紹介しましょう。

秘境駅とは、どのように定義されているのでしょうか?そもそも秘境駅という絶対的な基準はないのですが、秘境駅を研究している牛山隆信氏は次のような判断基準を設けています。

「平地が少なく駅の立地場所が限られる場所」
「古い駅舎がある」
「列車の停車本数が少ない」
「駅への取り付け道路が狭隘」
「かつて貨物の搬出や列車交換等に使っていた廃プラットホームと錆びたレールがある」等です。

飯田線にはこれに該当する駅が6駅あり、秘境駅の宝庫とも言われています。「飯田線秘境駅号」という臨時電車が年数回運行されている程です。(今年はコロナ禍で中止だった様です)全席指定席ですが、その日に思い立って乗ろうと思ってもそれは無理。ツアー会社が買い占めていたりで、個人的にはなかなか予約もできません。

 

豊橋発と飯田発がありますが、飯田発を基準に紹介していきますね。

上りの場合始発は飯田駅なのですが、天竜峡駅から乗車する団体も多いですね。
天竜峡の観光をしてから秘境駅巡りという方が、ツアーとしての人気も高くなるからね~。

天竜峡駅を出ると、次の千代駅がもう秘境駅で停車します。ホームは片側だけですね。昔は、天竜川の砂利を積み込むための専用線が、駅から分岐していました。

トンネルを出て直ぐ駅ですね。駅の近くには民家があります。駅まで入って来られる道もあり、ちょっとした駐車スぺースもあります。でも写真のカーブの先はとても細い道です^^;

次は直ぐ隣の金野(キンノ)駅です。昔の話ですが、奥村チヨが結婚した際、番組の司会をしていた吉村真理が「長野県の飯田線では千代と金野(コンノ)が並んでいます」と紹介していました。お相手の浜圭介の本名は金野 孝(コンノ タカシ)なのです。話がちょっと脱線しましたね^^;
ここは駅名票が人気です。「きんの」ですから、触ると金運が上がるなんて言う噂があるのです^^

安田サーカスの団長が秘境駅へ行って生活利用者を探す・・・という番組がありますが、たまたまこの駅の時に見ていました。たしか民宿をしているおじさんと会ったんですね。調べてみるとこの他にも田本駅、為栗駅、小和田駅でもやってしました。

次の秘境駅は田本(タモト)です。隣・隣と来ましたが、今度は少し走ります。田本駅はトンネルとトンネルの間にあり、狭いホームの背はコンクリートの壁。秘境駅ランキングでは6位に入っています。

この駅の撮影ポイントは、トンネルの上からがベストでしょうね。皆さんしっかり撮っています。

トンネルの先を少し進むと、上下に道が分かれています。上に登っていくと泰阜村の集落に、下に行けば天竜川のつり橋(竜田橋)に出ます。どちらも電車の停車時間内に行って来るのは無理ですが^^;

次に止まる秘境駅は為栗です。駅名は読めますか?「してぐり」は難読駅としても知られています。

駅に降りると皆さんが足早に向かう先は・・・

つり橋(天竜橋)です。橋からは天竜川と今乗ってきた秘境駅号を写す事が出来ます。

次の停車駅は秘境駅ではない平岡駅です。下り列車との行き違いの為、しばらく停車します。飯田線は単線ですからね。この日だけだったかもしれませんが、ゆるキャラのアルクマとおきよめっちもお出迎え!

地元もテントの店を出したり・・・もうちょっとしたイベントですね。

おきよめっちも記念写真のサービス!(おきよめっちは、天竜村の温泉「おきよめの湯」にちなんだゆるキャラです)お土産は秘境駅最中が人気のようです。

この駅では、飯田線の難工事に貢献したアイヌの川村カ子ト(カネト)氏の写真を見る事が出来ます。昭和35年に家族と一緒に訪れていたんですね。おや、刀を差していますね~^^;

さて、出発です。出迎えてくれた皆さん、今度はお見送りです。次の秘境駅は中井侍になります。

中井侍駅もトンネルを抜けて直ぐの所にあります。秘境駅は殆どこのパターンですね。

ホームのすぐ裏には民家があります。どうやらこの家の庭をホームにしてしまったようですね。長野県最南端であり、標高289m は、県内で一番標高が低い駅でもあります。

期間限定ですが、「緑茶Café 茶むらい」の営業があります。今年はどうだったんでしょうね?撮影したのは4年ほど前。抱っこの子も大きくなっている事でしょう。
この辺りはお茶の産地で、線路を挟んでお茶畑が広がっています。次の秘境駅は県外となる小和田駅です。

そういえば、今年の豪雨で中井侍~小和田間で土砂崩落がありました。まだ復旧できていなくて、平岡~水窪間が不通となっています。復旧は10月中頃になるようです。

此処で冒頭に書いた小説に触れておきましょう。
調布のマンションで若い女性が殺害された。被害者は28歳・独身の野田花世。刑事の北条早苗とは大学時代の親友。旅行社に勤務し飯田線を使ったツアーの企画をしていた。2日前に2人は会って飯田線の話をしていた。
花世は飯田線の調査で川村カ子トを知り、旭川にある川村カ子トアイヌ記念館を訪ねる。そこでアイヌの青年金子太郎と知り合い、いつしか恋仲になる。太郎は、カ子トが飯田線の建設に貢献した事は知っていたが、未だ現地には訪れていなかった。そこで今度は花世の案内で飯田線へ。彼が気に入った駅は、花世と同じで小和田駅だった。いつしか二人はここで逢瀬を重ねることになる。

この辺りからストーリーが不自然過ぎて腹立たしくなってくる。水窪と平岡辺りのカップルなら知り合いの目を避けて中間のこの駅で会うなんて事もあるかもしれないが、旭川と東京の二人がこの駅で待ち合わせるなんてあり得ないでしょう。しかも、駅に置かれている思い出ノートを二人は伝言板代わりに使っている。

「今日最後まで小和田で待っていたのに、君は来なかった」
この日彼は小和田駅にずっと居て、彼女と会えないまま旭川に帰ったのか?
「ごめんなさい。昨日は飯田支店で会議があって抜けられなかったの」
彼女はこれを書くためだけに小和田まで行ったのか?
今どきこんなカップルが居る訳ないでしょう。時代背景が昭和ならともかく、ネットも携帯もスマホも使える現代の事件なのだ。なぜスマホを使って連絡しなかったのか?電波が届かないのかな?
豊橋辺りで待ち合わせて、一緒に小和田に来る。これならこれ程の違和感は無かったでしょうね。

作者はこの現場に来てちゃんと取材したのかも疑わしい。来ていたとしても、それこそ秘境駅号で来て短時間見ていっただけでしょうね。駅名が当時の皇太子妃雅子様の旧姓である小和田(おわだ)と同表記であるとして、ご成婚の折はマスコミにも取り上げられたとか、記念列車も出てその「花嫁号」のヘッドマークもあるとか、当時作られた「愛の椅子」が残っているとか、駅に関する描写はその程度。

この駅の魅力というか醍醐味は、愛の椅子の少し先にあるのです。かつての製茶工場が残っているのだ。工場の方は部分的に屋根が落ちたりでかなり朽ちているが、事務所兼倉庫、住居も兼ねていたと思われる建物は未だしっかり残っている。
昔はこの周辺に集落があり、茶畑があった。製茶工場もあり、電車通勤の人もいたと思われる。お茶の出荷も駅からでしょう。かつては賑わっていた所なので、この様な駅舎がある訳だ。飯田線の秘境駅では唯一の駅舎です。

しかし佐久間ダムの建設で、集落も茶畑も水没してしまった。水は工場まで来なかったものの、茶畑が無くなればその存在価値はない。ダム建設時に落ちたといわれるミゼットが転がっているのもある意味風情がある。秘境駅ランキングでは堂々の3位に入っている駅なのだから、せめてこの程度は描写すべきですね。

駅には売店はおろか自販機もない。トイレは撤去されている。これだけでも若い女性が長時間過ごせる場所ではない。ほぼ1日居た時、彼はどう処理したのでしょう?
時刻表を見ると、時間帯にもよるが一旦この駅に降りると1時間程度は動きがとれない。

他にも突っ込みどころは満載だ。被害者の花世は、大学時代の友人(北条早苗刑事)に会った際「この企画が採用されたら真っ先に招待状を送るわ」と言ったが、その二日後に調布の自宅マンションで殺害されてしまう。しかし旅行のポスターは出来上がっていた。二日の間に企画が採用されて、ポスターも出来ている・・・オカシクネ?

ポスターには難読駅クイズの企画もあった。一駅読めたら2点。5点でお茶、10点でリンゴを賞品に・・・一問2点なのに5点? それにポスターに出してしまえば、客は事前に調べるに決まっている。クイズにならないね。

花世のもとには犯人からの脅迫状が届いていた。彼女は日本神話の研究会に入っていて、その会報に自分なりの解釈を投稿していた。次の号にはそれに対する激烈な批判が載せられた。「あなたの解釈は間違っている。しかも神話を侮辱している。許せない」更に脅迫状だ。こんな事になっていたのに、なぜ誰にも言わなかったのか?大学時代の友人には刑事となっている北条早苗がいる。なぜ相談しなかったのか?普通はするでしょう?とはいえ普通では小説が成り立たないって事かいね?それにしても、神話の解釈が殺人動機って???

作者の西村京太郎は、十津川警部シリーズで人気の作家。多くの作品がドラマ化されている。でも私が読んだのはこれが初めて。正直言って期待大外れ、がっかりしました。今は手抜き小説量産作家なのかな?

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追加情報
飯田線の秘境駅ですが、2017年に伊那小沢駅が追加になっていました。秘境駅ランキングは79位です。今の秘境駅号はこの駅にも止まります。中井侍の一つ手前の駅です。(今回紹介した秘境駅号は2016年の撮影です)伊那小沢は県内で一番最初に桜(カンザクラ)が咲く所です。

さらに今年(2020)又一つ追加されていました。中川村の外れにある伊那田島駅。秘境駅ランキングは200位です。駅へは広い道路があるので、車で楽に来られます。周りに民家はないですね~。果樹園、蕎麦畑、ブドウ園があります。


ホーム入り口に石碑があります。この駅は大正9年開業したんですね。古い石碑なのかと思ったら、平成9年の物でした。無人駅には珍しくトイレがあります。ホームは直線ですが、前後は直ぐカーブになっています。トンネルはないですね^^;

直ぐ近くの赤蕎麦畑から撮った写真がありました。赤蕎麦の栽培はもう止めてしまったので、今となっては貴重な1枚ですよ^^

伊那田島駅が秘境駅に加わった事で、秘境駅号は駒ケ根発便を新設。11月13〜15日に駒ケ根―豊橋間、21、22日に飯田―豊橋間で各日上り1本を運行。駒ケ根発便は伊那田島駅に初めて停車します。
下りは同日程で豊橋―飯田間を各日1本を運行。全車指定席で、乗車券の他に急行・指定席券が必要です。乗車日の1カ月前に飯田駅など主な駅で発売します。コロナ禍の今年は、個人でも予約できそうな気がします。いかがですか?

秘境駅号は2010年4月に飯田―豊橋間で運行が始まり、今年は10周年です。

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最後に、飯田線の歌を♪

YouTube ⇒飯田線のバラード 山本まさゆき

YouTube ⇒飯田線 小沢あきこ

(高18回 高田)