3/16 社会貢献委員会主催の講演会が行われました。講師は飯田保健福祉事務所所長の松岡裕之さん(高26回) 演題は「老人も荒野をめざす」でした。
会場は小体育館。在校1・2年生と、同窓生が聴講。下平社会貢献委員長(高19回)が開会の挨拶。大田中同窓会長(高22回)が、講師の松岡さんを紹介。
松岡さんです。スクリーンに色々な映像を投影しながらのお話でした。
今日の話の結論を先に言ってしまうと、皆さんは「みやましい人になって下さい」という事です。
演題の「老人も荒野をめざす」ですが、当時 五木寛之の「青年は荒野をめざす」という小説がありました。歌もあります。これに背中を押される様に、高卒後は荒野をめざし飯田を後にした訳です。
若い人たちは知っているかな?歌ったのは「ザ・フォーク・クルセダーズ」>YouTube 青年は荒野をめざす
当時思う人が居て、その人の影響で医者になろうと思ったのです。高3の12/31に、ネパールで医師になると決めました。
新潟大学医学部を卒業したのですが、大学を出て直ぐ医者には成れません。長野県の病院で3年間研修医となり、最後の三ヵ月だけですが東大の医科研で研修。ここで学問の面白さに気付いたのです。
27歳の時ジャイカの募集に応募して、インドネシアでマラリアの研究に携わる事になりました。
マラリアとはどう言う病気かと言うと、1年中蚊が居る熱帯地域の病気でワクチンも無かったんですね。
マラリアは菌ではないんです。原虫なんです。原虫と言うのは核を持っています。そして5%位が有性原虫です。
有性原虫を持った蚊に刺されると、赤血球の中でマラリアがどんどん増えてしまいます。血管の中にベタっと貼り付いて、血流を止めてしまいます。
そうなると酸素が来なくなる。酸素が来ないと脳がやられてしまいます。亡くなった人の脳を見ると毛細血管にマラリアがもうぎっしり詰まっています。
この病気にどう対処するか。蚊を退治する、殺虫剤を作る。症状を抑える薬を作る。有性原虫を殺す。色々考えられるのですが、有性原虫を殺すのが効果的ですね。
調べてみると有性原虫は幼児が多く持っていると分かりました。
昼間 学校や村で血液採取し、夕方から顕微鏡で検査。夜はマラリアの村を離れて宿泊。そんな生活をしていました。
マラリア原虫は春に少なくなる。この時に集中して有性原虫を殺す薬を投与。それなりの成果を上げ帰国。
帰国後は岡山大学へ。(28歳から~33歳)そこでは守備範囲を広げマラリア以外の寄生虫も研究対象でした。
その時出会った先生たち。中でも三重大学の鎮西教授は下条村出身で飯田高校の先輩でした。
その鎮西先生とのご縁もあって、三重大学に(33歳~40歳)
ここでまた蚊の研究を始めました。
鎮西先生はカイコの研究をされている方。そこでカイコにウィルスを注射して組換え蛋白を作りました。
その蛋白からワクチンを作りました。ネズミに効果の有るワクチンが出来ました。人に対しては、仲間が現在研究中です。
今度は自治医科大学に移りました。
ここでもマラリアの研究です。ハマダラカは何故マラリアを媒介できるのでしょう。
ハマダラカは血を吸う時に自分の唾液を飲み込んでいるんですね。それによって体内で血液が固まらないのです。
遺伝子を操作して毒性のある物質を体内で生産するハマダラカを作りました。
実際にハマダラカの腸内で原虫刹滅物質を作ると、内部で育つマラリア原虫数が激減しました。
更に遺伝子操作をして、ワクチン蛋白を生産するハマダラカを作る。
そうした蚊に刺されると、ワクチンを体内に注入する事になります。つまり蚊をワクチンの注射器にしてしまうという事を考えたのです。
国内では、そんなバカな事を・・・と相手にされなかったのですが、ビルゲイツが認めてくれたんですね。10万ドルの研究支援を受けました。
研究は進んで rDsRed という抗体をたくさん作る事が出来ています。でも未だ実用化の段階には来ていません。
東南アジアを中心に色々な国へ何回も行きました。ざっと整理すると、インドネシアが1番多いですね。16回行っています。今は行く事が出来ないミャンマーへも6回行ってますね。
世界のマラリアはどうなって来たか?アフリカを見ると減っていますね。
何が効果を上げたのか。薬とか殺虫剤とか色々やったのですが、蚊帳が一番効果的だった様です。
私たちは子供らのために蚊帳も開発したんですが、これがかなり役に立っています。
アジアの国々でもマラリアは減りました。
カンボジアは減っていない様に見えますがマラリアで亡くなる人は大幅に減少しています。
2016年、60歳の時に故郷に戻ってきました。私は長男で親を見る役目だったんですね。今は保健所で働いています。
出前授業もしています。飯田高校でもしています。保健所の業務として行うので講演料とかは必要ありません。
今はコロナですね。
長野県のコロナ患者数です。3/15のデータですが、飯田も多いですね。飯田は先生たちの頑張りもあって検査数が多いんです。その結果ですね。他所もちゃんとした体制で検査数をあげていれば、飯田より多い数字が出ると思われます。
酸素を必要とする患者数のグラフです。飯田は少ないですね。これも飯田の治療方針の成果です。
最後になります。最初にも言いましたが、皆さんは「みやましい人」になって下さい。保健体育の教科書を読んでください。良い事が書いてあります。
最後まで有難う御座いました。
最後に駒瀬校長(高33)がお礼のの挨拶。
生徒会よりお礼の花束が贈られました。
(3/16 撮 高18回 高田)